2017年7月13日木曜日

バフェット氏とシケモク投資

投資の神様と囃されるバフェット氏ですが、初期の段階では、グレアム流ネットネット株を主に投資対象にしていました。

 純資産をたくさん持っているが、時代にそぐわなくなって、株式市場で安く放置されている会社の株を買い集め、完全に買収するか、買収が難しい場合には増配や自社株買い、株の買取を経営陣に迫るということをしていました。道に落ちているシケモクのごとく、無料で最後の一吸いができるということで、バフェット氏はこれをシケモク投資と呼んでいます。

シケモク投資の良い点は、1ドルのものを50セントで買えるという安全性にあります。一方で、欠点は実際に50セントが1ドルになるカタリストのタイミングがなかなか訪れない点にあります。ですから、株を完全に保有するか、株の何割かを保有して経営自体に直接働きかけ、自分でカタリストを起こすことが重要になります。実質的には、利幅の大きい裁定取引みたいなもので、バフェットさんはこれを得意としていたみたいです。

これ実は、やっていることは村上世彰氏がされていたことと似ています。無駄に死蔵されている有限な資産を、投資家に還元して、より社会の役にたつ投資に回せるようにするのは経済の発展のために重要なことです。

ただ、バフェットさん自体は、このグレアム流ネットネット投資から、フィッシャー流グロース株投資の要素も取り入れていくようになります。 チャーリーマンガーさんのアドバイスや、割安な株自体が減ってきて、資産も大きくなり、裁定の機会が少なくなってきたという背景はありますが、大きな転機は1960年代初めに、風車製造会社であるデンプスターを買収したときのようです。

デンプスターの大株主となったバフェット氏は、破産寸前の会社に企業再生の専門家を送り込み、必要なリストラを行います。バフェット氏からみれば、破産を食い止め、会社を救ったのですが、100人程度のレイオフも発生し、地元の新聞から連日叩かれたようです。ここまで住民に嫌われることを予想していなかったバフェット氏は、かなりショックを受けたようです。

最後の大きなシケモク投資となったのは、1960年代の後半、日本の繊維工業の勃興で斜陽産業となっていた、繊維会社バークシャーハザウェイの買収です。この投資をバフェットさんは、「今までで最悪の投資」と後に振り返っています。この時は、レイオフや工場の閉鎖自体は行わず、赤字にならない程度に事業を続けたようです。また、これは敵対的買収でもありました。この時に得たバークシャーの現金を元に、後に保険事業を買収し始めます。

バフェット氏自体は、敵対的買収や大幅なリストラが必要な投資は、これより後にほとんど行わなくなりますが、その重要性、必要性自体は認めているようです。

この辺りから、シケモク投資から少しずつ、ビジネスの価値自体に注目する投資スタイルに変わっていったようです。


参考文献:スノーボール 日本経済新聞社

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