2019年1月13日日曜日

実質的な通貨発行益と統合政府のプライマリーバランス

なんか、最近、日本の財政は危機的だという前提で社会保障の議論とかしている人いるんですが、日本の財政は全然健全であると個人的には思っています。

財政を家計と勘違いしている人もいるみたいですが、当の財務省が、財政を家計に例えるコラムを書いているんですね。本当に悪質な印象操作ですね。

財政にはあって、家計にはないものは、徴税権と通貨発行権ですね。

徴税権は、何となく、財政の収入というイメージはあると思いますが、実は通貨発行権自体もかなり大きな収入源になりうるものではあります。

いわゆる通貨発行益というものがあるんですが、一般的には、これは、日銀が日銀券を発行して、買い入れた有価値の証券等から得られる、利息や配当、資産の値上がり益のことだそうですが、実質的には、通貨発行した額そのもの自体が、通貨発行益になりうると思います。発行通貨額―印刷代とか言うやつですかね。

で、日銀券は日銀にとっては負債なので、そんな実質的な通貨発行益など存在しないという議論も存在するようですが、日銀券を持って、日銀に行っても、何かに交換してもらえるわけではないのですし(破れた日銀券は別の日銀券に交換してもらえるそうですが)、日銀自体には何ら義務は発生しないので、日銀券を日銀の債務と考えるのは実質的には無理があります。そのまま、発行した通貨額が、通貨発行益になると考える方が現実に近いとは思います。

例えば、無利息で、返済期限のない借用書を発行したら、それは債務と呼べるでしょうか。個人的には全く、債務ではないと思いますし、国税庁もきっと同じ見解でしょう。日銀券は、無利息で、返済期限はありませんし、唯一額面だけ書いてあるので、同じ理由で日銀にとって債務ではありません。

後は、日銀は独立しているんだという議論もありますが、日銀の収益は、国税の方にまわされますし、経営自体は独立していても、財務的には政府の子会社として扱うのが適当でしょう。

統合政府で、通貨発行益を考えれば、財政の純債務も100兆円強ですし、プライマリーバランス自体も、全く問題ないレベルになります。2017年度とか約38兆円の財政赤字ですが、日銀のバランスシートが38兆円増えてますので、プライマリーバランスは若干ですが、+です。

通貨発行益の副作用は、もちろんインフレですが、インフレ率を上げたい今、副作用はほぼないですね。不完全雇用状態での量的緩和は、国民全体の総所得を上げて、統合政府での財政状況をよくしますので、メリットが圧倒的に勝っていると思います。

財政はとても健全です。むしろ、長期金利が0近辺で、インフレ率が上がっていない現在、量的緩和と合わせて、財政緩和の方が必要になってくると思います。

追記:付利(民間銀行など金融機関 が日本銀行に預ける当座預金 の超過準備 (払い戻し分を超過した金額)に付く利子)があるので、日銀券は日銀にとって債務だという人もいるようですが、(白川前日銀総裁とかもそう言っているようですね)、「債務者」である日銀が決められる付利を理由にして、日銀券を債務ととらえるのは無理があると思います。債務者が金利を自由に決められる、かつマイナス金利にすることも可能って、そんなん債務とは呼べないですよね。

もちろん、インフレになったら、付利を上げることも含めて(別に上げなくてもいいけど)、何らかの金融引き締しないといけないですし、制御不能なインフレがきたらどうするんだという意見もあるようですが、その時は、日銀や政府の「債務」の実質負担も下がるわけですし、「債務」を理由に制御不能なインフレが起こるのは、普通に考えておかしいですよね。実質的な債務が減るのがインフレなのに、政府や日銀の「債務」を理由に、インフレ率が上がり続けるというのは理屈上矛盾しています。


2019年1月6日日曜日

マクロ分析と企業分析

パウエルさんが、ハト派発言をしたのと、米雇用統計が良かったのもあって、市場は若干落ち着くんでしょうかね。

雇用自体は遅行指標という話もありますが、平均時給自体は個人消費の先行指標という話もあって、指標が良かったことと、良い指標でもインフレ率が上がらない可能性があることをパウエルさんが警戒していることを話したのが好感されたんでしょうか。

特に、FRBのバランスシートの縮小についても、12月の時点ではそのまま縮小すると言っていた姿勢を、柔軟な姿勢に変更すると宣言したのは大きいかもしれません。

個人的には、業種にもよるとは思いますが、マクロ分析1割、企業分析9割くらいで投資判断するのが、良い分析なんじゃないかとも勝手に思ってるんですが、2011年のマクロ経済政策を完全に間違えた日本の酷い相場や、世界のマクロ環境が急激に悪化した2008年なんかを見ると、マクロ分析もきちんと考える必要があるんかなとも思います。

特に、近年、マクロ経済の落ち込みの大きな理由の一つが、予防的にインフレを防ごうと、インフレ率が上がる前に中央銀行が引き締めをし過ぎたんじゃないかという分析も、ちらほら出てきたりするんで、FRB見ながら、マクロ環境見ていくのも必要なのかなという気もします。

良い雇用統計が出たので、引き締め始めますというふうに、短絡的にならなかったパウエルさんは、個人的には正しいのではないかと思います。実際良い雇用統計の、1-2年後にリセッションになったのが、直近の景気後退(2000年、2007年)でしたので。

後は、2000年や2007年のように、バブル的要素があるかどうかですが、今のところ、そこまで、過剰なバブルや、債務が積みあがっている感じもないんですけどね。中央銀行のバランスシートが増えているのは、どちらかというと民間がレバレッジ掛ける力(信用創造)が減ってる今となっては、仕方がない部分もあるとは思います。

後は、マクロ分析なんかよりも、2倍―3倍になるかもしれない個別株をしっかり探す方が、資産は増えるかもしれませんが、そんな簡単にはよい株は見つからないか、既にかなり高めに評価されてたりしますんで、簡単ではないですね。マクロ分析も企業分析もどっちもやった方がいいんでしょうね。

全体市場が低迷した方が、良い株を安く買える可能性もありますので、頑張りたいところです。