2018年11月29日木曜日

SB623とMUSE細胞とiPS細胞 雑感

バイオ素人ですので、内容間違ってるかもしれませんし、医学的な部分は素人の当て推量です。鵜呑みにしないでください。あと、投資勧誘ではありません。

再生医療では間葉系幹細胞(MSC)と言う細胞が、注目されていて、この細胞が様々な組織の再生に役立つのではないかと考えられているみたいです。


SB623

サンバイオのSB623も間葉系幹細胞に一過性にNotch1遺伝子を導入(分化後にnotch1は無くなる)し、それらを分裂させたものを細胞薬としているようです。血管を新生させる栄養効果を高め、さらに細胞内にMSCよりも多くのFGF2を含んでおり、これがSB623細胞が死ぬときに周りの細胞の増殖を促すようですね。

http://www.bridge-salon.jp/movie/4592_160923_jXn797/present.pdf


さらに、バイオブリッジを形成して、脳の損傷個所と神経幹細胞の橋渡しをするようですね。神経幹細胞が損傷個所に移動して、移植した細胞は宿主神経幹細胞と置き換えられるということだそうです。


つまり、移植した細胞は死んでしまうが、宿主神経原生細胞が移動して置き換わるみたいですね。動物実験では、バイオブリッジを経由した原生細胞の移動から、移植箇所で未熟な神経分化が急増したっぽいです(神経の前駆細胞が発するネスチンが増加したそうです)。神経として置き換わって、実際に再生していたなら凄いことだと思うんですが、そこまではっきりとは書かれていませんでした。(一歩手前までは動物実験で確認したっぽいです)(特開2018-111733参照)


ただ、SB623を投与された患者の改善が長期(術後1年程度?)に渡って続いているところを見ると神経細胞自体も再生して、定着していると考えてもよさそうな気はします。(確信はありません)


あと、ひとつ疑問として、残っているのが、SB623って、そもそも何なのかと言うことですかね。間葉系幹細胞からNotch1遺伝子を導入することで得られた、神経細胞(に近いもの)なのではないかとも思ってたのですが、(神経細胞が死ぬことで、生体の回復しようとする力をひきだした?)どうなんでしょ。違うっぽい気もしますが、これについてはよくわかりません。IRの方もSB623が何なのかは研究途上なものでという見解でした

慢性脳梗塞の実際の治験が進んでいるので、とても有望な気はします
。外科手術が必要ということで、若干普及が大変かもしれませんが、慢性脳梗塞・脳外傷の改善が可能であるのならば、やる価値はあるのではないでしょうか。

若干気になるとすると、脳神経外科の人数とか病院の数ですかね。定位脳手術という手術で、リサーチレポートの数字のように、年に何十万人と処置できるのかちょっと、素人なのでわかりません。特に人口当たりのアメリカの脳神経外科医の数(2005年)が少ないようにも見えますが、これもどういうことなのかはわかりません。
http://www.jssfn.org/approval/index.html
http://www.japan-senmon-i.jp/hyouka-nintei/data/
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/03/s0311-5a4.html

一方で、競合についても考えなければいけないとは思います。別の細胞再生薬や、再生を誘導するような薬等があるかは考えなければいけないとは思います。

MUSE細胞

で、以下、競合になるかもしれない一例としてのMUSE細胞について、(ただ、これはまだ慢性脳梗塞に関しては研究段階っぽいです。また、競合ではなく併用できる可能性もあるかもしれません。)

MUSE細胞について調べると、2010年に発見が発表されて、まだ研究中だとは思いますが、割と凄い細胞だという印象です。iPS細胞などと比べるとあまり話題になっていません。


東北大学の研究によると、間葉系幹細胞は栄養効果や免疫抑制機能を担うnon-muse細胞と組織再生を担うMUSE細胞に分かれているのではないかということです。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/spinalsurg/28/1/28_17/_pdf


今のところ、急性心筋梗塞、亜急性期脳梗塞において、静脈投与で治験を開始しているようです。まだまだよくわからないんですが、動物実験では良い結果が出ているみたいですね。

一応、マウスにおいて、慢性期の脳梗塞(ラクス梗塞)における、MUSE細胞の直接投与で、効果が出ているようです。(血管と神経が再生されているようです)。ただ、慢性期とはいえ、梗塞後2週間のマウスのようですね。

https://tohoku.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=99383&item_no=1&page_id=33&block_id=38

MUSE細胞は急性期の傷害の回復には有望な可能性があるようですが、人間の慢性期脳梗塞だと効果があるのかはわかりません。

慢性期の脳梗塞では血液脳関門があるため、簡便な静脈投与では難しいかもしれません。あるいは、脳骨髄の中に注射することで効果があるのでしょうか。もしくは、SB623同様の直接投与が必要なのでしょうか。

また、MUSE細胞自体はS1Pという物質を標的に集積するようですが、数年たった慢性脳梗塞でもS1Pと言う標的があるのかどうかも気になります。

http://www.med.tohoku.ac.jp/uploads/tohokuuniv-press20180306_Finalv3.pdf

S1Pが存在しないとMUSE細胞は上手く作用できないのでしょうか。出澤教授は「S1Pのターンオーバーは臓器によって異なるので、慢性期でもMuse細胞が効果を発揮できる疾患はあるのではないかと考えている」とコメントしたらしいです。

https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/18/03/06/03957/

どうもS1P受容体作動薬を脊髄損傷個所に投与すると、幹細胞の誘導を招いて、損傷部位の回復を促すこともできる可能性もあるようです。(体内にあるMUSE細胞が集まってくる?)ただし、これも脊髄損傷直後に投与したようで、慢性期ではありません。組み合わせて使用することも可能かどうかは気になるところと、慢性期でも上手く効果があるのかはよくわかりません。

http://www.invivoimaging.net/research/s1p.php

いずれにしろ、MUSE細胞を慢性期脳梗塞の治療に使うのはいくつかハードルがありそうです。超えられるかもしれませんし、難しいかもしれません。どうなるでしょうか。

あと、他家のMUSE細胞でも免疫抑制機能を発揮し、細胞が再生され、ある程度持続されるとのことですが、長期に渡っても免疫が抑制されるのかは気になります。やはり、自家MUSE細胞の方が良いとなると、コスト的には割高になる可能性もあるんでしょうか。まだまだ、わからないことが多いです。

iPS細胞


11/30追記 あと、iPS細胞とGSIという薬の組み合わせで、慢性脊髄損傷の回復(軸索が再生)がマウスで見られたみたいですね。さらっとニュースになってましたが、実はこれ結構凄いのではないかと思います。

https://www.amed.go.jp/news/release_20181130-01.html

移植した細胞と、原生細胞による再生が組み合わさって慢性期の傷害が良くなる可能性があるかもしれないですね。グリア瘢痕の存在が、慢性期の骨髄損傷と脳梗塞や脳外傷の回復の課題(グリア瘢痕にはグリア瘢痕の役割があるみたいですね)になっているようですが、こちらも解決の糸口がつかめるのであれば、すごいですね。

未分化のiPS細胞が残っていると、癌化の恐れの心配もあるようですが、そこを回避するような研究も進んでいるようで、とても興味深いですね。日進月歩ですね。

2018年11月24日土曜日

「雇用,利子および貨幣の一般理論」を読んで 11/26追記・訂正

ケインズ読んでみました。翻訳版ですが、やはりちゃんと本人の著作を読むのが良いですね。難しかったので、たぶんもう一度読み直すとは思いますが、一応感想(適当です)。

過剰貯蓄が非自発的失業の原因になっているのではないかという、着想から、古典経済学では想定していなかった(存在していなかった)非自発的失業を土台に、雇用、利子および貨幣について理論化した凄い著作っぽいです。

雇用から生まれた所得はすべて消費されるわけではなく、一部は貯蓄に回されるので、貯蓄を上回る何らかの投資がないと、需要が供給を下回り、完全雇用状態にはなりえないということらしいです。

あとは、名目賃金を下げることが難しいというのが、事態を難しくしていると分析していて、まあ、確かにそうかもしれないですね。ビジネス自体は当たり外れ浮き沈み、景気循環があるのに、「うちの会社は収益が悪くなってきたから、明日から、賃金減らします」ってのは現実的に難しいですよね。

個人的には賃金を下げやすくしたり、解雇をできるようにすることも日本では必要なのではないかなとは思います。ただし、下手にこれをやると消費性向が弱まって、より需要が供給を下回るなどして、現実的には物価の変動が大きくなり、全くよくないとケインズは主張しているようです。ですので、今のところはしっかり金融と財政を緩和気味にして、完全雇用を目指すのが、一番いいかもしれないですね。賃金を下げたり、解雇をするよりはインフレ率上げて、実質賃金を必要に応じて、企業が下げれる方が、現実社会ではうまくいきそうなんですかね。

あとは、金利自体が割と安定して経験的に高い状態にあることだったり、長期金利が理論より下がりにくいこと、豊かな社会では消費傾向が下がって、貯蓄傾向が強まり、完全雇用が実現しにくくなるかもしれないと、考察していて、日本の現状を80年前くらいにすでに想定していたとなると、ホント凄い人ですね。そういう意味では、量的緩和で長期金利に働きかけたり、貯蓄から投資へ促そうという今の日本の姿勢は、正しいんじゃないかとは思います。

あと、一般的にケインズと言えば財政出動というイメージもあるかもしれないですが、この著作を読む限りには、どちらかというと金融政策というか、利子率と貨幣について考察していますので、むしろ金融政策の方を重視しているようにも印象は受けました。まあ、どっちも重要なんでしょうが。

11/26追記、あとなんとなく思ったのは行動経済学とかで言われている、いかに人の判断は合理的でないかというような研究ともケインズの考察は関係あるかもしれないですね。名目賃金の下げには強硬に反対するが、インフレによる実質賃金の下げには鈍感という非対称性は、人間がいかに経済的に非合理かという証拠の一つかもしれません。人間は合理的ではないが非合理性には特定の傾向があるから、現実見ながら理論とか政策を作ろうぜというのが、古典経済学から現代経済学への変化なのかもしれないですね。


2018年11月5日月曜日

Mr.バイオ雑感2 (11/7,11/9追記あり) 

サンバイオについて

Mr.バイオ雑感 (前に書いたの)
https://dcflongterm.blogspot.com/2018/09/blog-post.html

サンバイオ慢性期脳外傷の治験の結果が良かったみたいで、素晴らしいですね。世界に先駆けて画期的治療の効果を示せて本当に凄いことです。

一方で、まだ、寄ってませんが、投資家としてはリスクも見ないといけないと思います。(バイオ素人なので、当てにはならないと思います。)

一つは、後発薬が出てくるかどうかですね。細胞治療薬に依存しているサンバイオとしては、より効果のある細胞薬や、より簡単で低コストな後発薬が出てくると厳しい部分はあるかもしれません。ただ、こればっかりはどうなるかはわかりません。

一応、脂肪由来の幹細胞を静脈注射で、慢性脳梗塞の改善を謳う病院もあるようです(11/7追記:慢性期の方でよくなった例はあるようですが、あまり期待 し過ぎないようということらしいです。どちらかというと急性期の方が効果がありそうと聞きました。)が、実際治験してみないと本来の効果はよくはわからないかもしれません。

あとは、副作用ですね。幹細胞自体が癌化することは可能性としては少ないかもしれませんが、造血官の作用があるなら、がん細胞を手助けする可能性もあるかもれません。脂肪由来の幹細胞を静脈注射の場合は、がんがないかは事前に調べるっぽいですね。副作用自体の可能性は少ないかもしれませんが、こればっかりはよくわかりません。

よくわからないことばかりなのは自分が不勉強なためかもしれません。競合が出なければ、市場規模自体はかなり大きいですし、有望だと思います。何より、慢性脳梗塞・脳外傷の方に改善の希望が生まれたのは素晴らしいことだと思います。

11/9追記 たぶん、鍵となるのはSB623にnotch1を導入した効果がどうかなんですかね。これが、最良の方法なら、盤石、そうでないなら、リスクは残るんですかね。副作用も、これがどう影響するかも関係するかもしれないですし、そうでないかもしれません。