2018年11月24日土曜日

「雇用,利子および貨幣の一般理論」を読んで 11/26追記・訂正

ケインズ読んでみました。翻訳版ですが、やはりちゃんと本人の著作を読むのが良いですね。難しかったので、たぶんもう一度読み直すとは思いますが、一応感想(適当です)。

過剰貯蓄が非自発的失業の原因になっているのではないかという、着想から、古典経済学では想定していなかった(存在していなかった)非自発的失業を土台に、雇用、利子および貨幣について理論化した凄い著作っぽいです。

雇用から生まれた所得はすべて消費されるわけではなく、一部は貯蓄に回されるので、貯蓄を上回る何らかの投資がないと、需要が供給を下回り、完全雇用状態にはなりえないということらしいです。

あとは、名目賃金を下げることが難しいというのが、事態を難しくしていると分析していて、まあ、確かにそうかもしれないですね。ビジネス自体は当たり外れ浮き沈み、景気循環があるのに、「うちの会社は収益が悪くなってきたから、明日から、賃金減らします」ってのは現実的に難しいですよね。

個人的には賃金を下げやすくしたり、解雇をできるようにすることも日本では必要なのではないかなとは思います。ただし、下手にこれをやると消費性向が弱まって、より需要が供給を下回るなどして、現実的には物価の変動が大きくなり、全くよくないとケインズは主張しているようです。ですので、今のところはしっかり金融と財政を緩和気味にして、完全雇用を目指すのが、一番いいかもしれないですね。賃金を下げたり、解雇をするよりはインフレ率上げて、実質賃金を必要に応じて、企業が下げれる方が、現実社会ではうまくいきそうなんですかね。

あとは、金利自体が割と安定して経験的に高い状態にあることだったり、長期金利が理論より下がりにくいこと、豊かな社会では消費傾向が下がって、貯蓄傾向が強まり、完全雇用が実現しにくくなるかもしれないと、考察していて、日本の現状を80年前くらいにすでに想定していたとなると、ホント凄い人ですね。そういう意味では、量的緩和で長期金利に働きかけたり、貯蓄から投資へ促そうという今の日本の姿勢は、正しいんじゃないかとは思います。

あと、一般的にケインズと言えば財政出動というイメージもあるかもしれないですが、この著作を読む限りには、どちらかというと金融政策というか、利子率と貨幣について考察していますので、むしろ金融政策の方を重視しているようにも印象は受けました。まあ、どっちも重要なんでしょうが。

11/26追記、あとなんとなく思ったのは行動経済学とかで言われている、いかに人の判断は合理的でないかというような研究ともケインズの考察は関係あるかもしれないですね。名目賃金の下げには強硬に反対するが、インフレによる実質賃金の下げには鈍感という非対称性は、人間がいかに経済的に非合理かという証拠の一つかもしれません。人間は合理的ではないが非合理性には特定の傾向があるから、現実見ながら理論とか政策を作ろうぜというのが、古典経済学から現代経済学への変化なのかもしれないですね。


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